イガ類

イガとは衣類につくガという意味で,日本では後述のイガおよびコイガのほかにジュウタンガも繊維製品の害虫として知られている。いずれも鱗翅目(LEPIDOPTERA)のヒロズコガ科に属する小さいガである。加害ステージは幼虫期のみで,成虫は食物を接取せずに交尾・産卵が可能である。 これらの仲間は,現在では屋内害虫として世界的にもよく知られているが,野外における生活については鳥の巣から発見された事例が散見されるものの,詳細は定かではない。また後述のように,この仲間は羊毛で生育可能とはいっても,栄養的には不足で,衣類の被害も他の栄養分が多く含まれた汚れた部分に多い。これらのことから,この仲間が自然界においても野生動物の体毛に寄生していた可能性は少なく,この食性は屋内害虫化してからの2次的なものと思われる。イガ類の原産地もよくわかっていないが,現在では,人の移動にともなって全世界的に分布を広げているものが多い。 本来ガの仲間の大部分は植物質を食するが,ヒロズコガ科に属するものは食性が広く,イガ類のような繊維害虫がある一方では,コクガのように貯穀害虫として知られた種類もある。

対処法

イガ、コイガ、ヒメマルカツオブシムシ,ヒメカツオブシムシは衣類害虫としての重要種であり,羊毛や毛皮などの主成分である蛋白ケラチンを消化,吸収できる能力をもつ.しかし,栄養的にはケラチンだけでは充分に成育できないので,衣類の汗や酒,ジュースなどのしみで汚れた部分を好んで食害する.



a.昇華性防虫剤
家庭用として広く使用されているものにパラジクロルベンゼン、ナフタリン、樟脳がある。これらは昇華速度が早いので、これらを抑えるためにセロファンまたは和紙で包装したものが多く市販されている。 これらの防虫剤の飽和ガスによるイガの50%致死時間は、パラジクロルベンゼン1.55、樟脳7.13、ナフタレン11.82時間で、パラの殺虫力が最も大きい。 パラジクロルベンゼンのヒメカツオプシムシに対する有効量は、密封状態で1リットル当たり2。5mgであるが、実際には衣類の保管容器の種類、密閉度、その中に入れる衣類の量などによって異なる。主成分の異なる防虫剤を一緒に入れると、溶けて衣類にシミを残すことがある。

b.蒸散性防虫剤
ピレスロイドであるエンペントリン(ベーパースリン)は、蒸気圧が高く、常温で徐々に揮散する性質がある。これを利用した衣類防虫剤の効果が認められ、家庭用に広く市販されている。安全性が高く、臭いもほとんどなく、実用的には、500mgのエンペントリンを含侵した150平方pの濾紙をタンスあたり2枚施用すれば、6ヵ月間イガに対する効果が期待できる。

c.防虫加工剤
衣類やカーペット、羊毛ぶとんなどを製造する段階や、クリーニングの際に防虫加工剤で処理する方法がある。デイルドリンやミチンLAなどは毒性が問題になって使用禁止になったが、現在ではミチンFF、オイラン、ガードナー、ペルメトリンとヘキサヒドロピリミジン誘導体の混合物(ミチンAL、オイランSP)などが使用されている。

d.予防法
古くから“虫干し”の習慣があるように、衣類、カーペット、毛皮製品、はく製などを保管する場所をよく清掃し、カーペットなどは時々日光にあててよく乾燥させるとよい。衣類は汚れたまま保管せず、クリーニングをすること。ヒメマルカツオブシムシの成虫が羽化する4・5月には、屋外で干した洗濯物やふとんなどに付着したまま屋内に持ち込むことがあるので注意すること。

主な種類

イガ

コイガ

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イガ コイガ

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このページを作成するに当たり、

「原色図鑑
 衛生害虫と衣食住の害虫」

(安富和男・梅谷献二共著
 全国農村教育協会発行)

「都市害虫百科」
(松崎沙和子・武衛和雄共著
 朝倉書店発行)

の内容を引用させて頂きました。